前回gyoさんから歯科用のレジンについて質問がありました。模型を作成される方は多分興味ありますよね〜。
そこでごく狭い範囲の人たち用wスマイル歯科ならではの目線で歯科材料をご紹介します。
このアクリルケースに充填用レジンのセットが入っています。
最近は小さな虫歯の場合、削った穴にはこれらの充填用レジンが充填されます。
上がパテ状のレジンで穴に押し込んで形をスパチュラのようなものを用いて整形した後に光照射します。
下の物は少し流れのあるレジンで、穴に流し込んでいくことができます。表面張力がありますので、多少なら盛り上げることもできます。
共に光照射器で10秒程度で固まります。色がクリアーでないので1回の照射で完全硬化させる深さは3mm程度と言われています。
硬化後は表面に未重合部分が残りますので、これを研磨します。研磨前なら接着剤等は必要なく盛り足すことができます。研磨していない状態でもタミヤの光パテほどの未重合層は無くベタついたりはしません。
硬化後はどちらもかなり硬くなります。通常のスチールバーなどでの切削は難しいです。さらに紙やすりなどのヤスリがけも困難で、模型用にはむきませんが複製の時に下の流れのあるレジンで作ると表面の綺麗なものができるとは思います。
ただ、どちらも3g少しの量で3000円以上します^^;1g1000円ですねw
この時点で模型用という目的からは除外となりそうですw
それと、これらのレジンは単体での接着性はありませんから、治療の時には歯に接着するためにボンディング材というものをしようするのですが、
これが5mlで13000円(桁間違っていませんよw)しますw
模型製作に使う時には素直に瞬着での接着がいいですねw
次に私が時々模型製作で使っている即時重合レジン通称「即重」です
モーターの台座の金属とプラ板をこの即重で止めています。私は模型で力のかかる部分には必ずこれを使用します。
このレジンは仮の歯を作る時(白いレジン)や、入れ歯を修理する時(ピンクのレジン)に使います。粉と液を混ぜて使いますが、通常は筆に液を染み込ませてそれを粉末の中に差し込んでレジンの塊にして盛っていく(筆積み法)ように使います。
このレジンは模型を作るうえでは結構便利です^^。
プラ板などのプラに対する接着性はかなり強力で今まで剥がれたのを見たことがありませんw私の中ではプラに対する食いつきと強度に絶対的な信用があります。サーボやモーターを固定する時はこれを少量使います。
プラリペアが多分似た感じなんではないかと思います。
硬化後は通常のプラよりは硬いですが、先ほどの充填用レジンほどではありません。
スチールバー等で十分加工できますが、やはり紙やすり等をかけるには固すぎる感じです。
私は複製する時、シリコンの型にこのレジンを流し込んで複製することもあります。
ただ、これもお値段が・・・・粉末250gで8500円 液250gで5300円程度です。
素直にプラリペアの方が良さそうかもですね^^;
ちなみに即重の透明バージョンもありますが、通常の使い方では白く濁っています。
ただ、これを加熱重合すると結構な透明度になります。
加熱重合という工程が模型製作では面倒でやる人はいないと思います^^;
ちなみに、これらのレジンを切削するのに使うポイントですが、こんな感じです。
青と茶色の物はシリコンポイントで金属の研磨や硬質レジン(充填用レジン等)の研磨に使います。
カーボランダムポイントは金属や硬質レジンの切削に使います。
カーバイトバーは即重の切削に使います。
その他の先端の丸い物(ラウンドバー)棒状になっている物(フィッシャーバー)は細かい部分の切削に使います。
つぎにコア用レジン。大きな虫歯で被せ物をする時などに歯の補強に使うレジンです。
これはシリンジを押すと2種類の粘材が同じ長さだけ出てきます。
これを練和して光照射10秒
カチコチに硬化します。先の充填用レジンと似ています。
これもヤスリがけは困難な硬さです^^;
これもお値段は約9gで8000円程度します。
次に接着用のレジンです。これも充填用レジンと同じ感じですが、やや透明がかっています。
これも光照射で硬化しますが、硬化後はこのような感じで濁った透明ですね。
次にトレーレジン。これは入れ歯等を作る時に、トレーという顎の型を取るためにマウスピースみたいな物を作るのですが、それを製作する時用のレジンです。
練り方に癖のあるレジンではありますが、粉と液を混ぜたものが餅状になりますのでとても使い勝手がいいのです。
穴を大雑把に塞ぎながらサーボを固定したりできます。(下写真はポケールのテスタロッサ製作時のもので、黒いサーボの下にあるピンク色の粘土のようなものです。)
即時充填レジンでは量が多くなってしまいそうな時にはこれが便利です。
お値段も粉1kg5400円 液250ml1500円です。即重より随分お安くなっています。
で、このレジンのもう一つの利点は硬化後の強度です。
ファルコンの支柱はこのレジンで固定しようと思っているくらいです。
このほかにも歯科では色々なレジンを使っていますが、どれも値段と硬さが^^;
パテとして使えそうなレジンはありませんが、固定用、強度出し等には使えるレジンは多いと思います。私的にはお勧めは即時重合レジンとトレーレジンなのです。
ネットで見てみるとこれらのレジン一般にも売っていました^^。
トレーレジン粉末(ピンク)500g トレーレジン液2250ml
歯科材料の量販店で買うよりはやはり高めの値段設定になっていますね・・・。
とにかく歯科用の物は医療用という認可を取るためにどの材料も高いです^^;
で、あとついでに型取りとかも興味あると思いますので詰め物作成の流れをw
まずはアルジネートという粉末の型取り材を使います。
これと水を混水比を守って機械で混ぜます。
歯科で型取りの際に少し爽やかな感じの粘土状の物を口に入れられると思いますが、これがそれです。
これをトレーに盛ります。
この印象材だけだと細部の表現性が劣りますので、細部は寒天を使用します。
機械で一定の温度に温められているシリンジに入った寒天を
注射器のような器具に差し込んで使用します。
型取りの時に少し暖かく感じるのはこの寒天です。
これをこのように削った部分に
注射器のような器具を使って気泡が入らないように入れていきます。
この上から先ほどのトレーに盛ったアルジネートを被せていきます。
3分くらい待って固まったら外します。
このように綺麗に細かい部分まで型取りができます。
これに硬石膏(普通の石膏より硬くなります)をバイブレーターを使用して気泡を入れないように流し込んでいきます。
固まるのを待ちます。
固まった硬石膏を外すとこのような感じで元の形が再現されています。
この状態で技工所に渡し、この模型上でワックスで型を作り、それを石膏のような物(埋没材)に埋没して、それを熱して内部のワックスを溶かしその中に金属を流し込んで歯の詰め物ができます。
ちなみに複製をされた方は多分経験あると思いますが、ただ漫然とこれらの作業をしたのでは詰め物や被せ物は絶対に口の中に入りません。色々な作業工程で膨張や収縮があり微妙に大きさが変わってくるんですね。簡単な話金属が流し込まれたすぐの熱い時の大きさと、冷えた時の大きさは違います。そのため、使用する材料の膨張率や収縮率を全部計算して埋没材等の混ぜる混水比等が決まっています。多くのステップの中の1つでも微妙なミスがあるともう適合不良となってしまいます。
ですから、もし歯科で詰め物を入れる時に、「詰め物が合わないので再製させてください。」と言われた時には許してくださいね^^;
歯科関係者はそのくらい精度高めたものを作ろうとしています^^。
結局最後は言い訳になってしまいましたw
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おはようございます!
使用する材料や機材のご紹介をありがとうございます。
私は結構歯医者さんには日ごろからお世話になっていて、詰め物などの過程が良く分かりました。
各種のパテなどの材料も色々あるのですね。
それも結構な価格で。
医療機器の開発にかかわっていましたので、医療機器の価格に関しては、定価の半値、八掛け、二割引きなんて冗談も理解していますが、材料も結構お高いのですね。
6jiroさんが、これらをお使いになれる環境で、うらやましいです。
健康保険適用で購入できればいいのですが(笑)
Vividさん おはようございます!
定期的に歯科にかかっていらっしゃるんですね。美味しいものを長く食べるためにもいい事だと思いますので続けてくださいね^^。
レジン関係はほんと多くの種類があります。同じ目的でも各社色々な物を出しているので全部網羅できませんw
そうなんですよ〜。医療用という認可を受けるのに相当な経費がかかるのは理解できるのですが、それにしてもお値段がね・・・。
医療機器の開発されていたんですね!確かに医療機器も恐ろしい値段がついていますからねw
ちなみに私は患者さんの口腔に入らない物は模型用使っていますw
技工物の切削用の機械とかポイントとか。
確かに材料や機材も健康保険適用で購入できればモデラーが飛びつきそうですねw
おはようございます。
興味深いご講義でした。
ありがとうございました。
歯科では口の中で何をされているのか見えないので、いつも不安になります。
こんなことをしているんですね。
模型製作で使用したレジンのコストはクリニックの持ち出しですか?(笑
taraさん こんばんは!
模型を製作される人はなんとなく想像つくとは思いますが、何されているかわからないことが多いでしょうね^^;
模型で使用するときは病院から少量袋に入れて持って帰っています。
今までの分量考えると2千円位でしょうかね〜。
うはあー。
とても興味深く楽しいエントリ、ありがとうございました。
毎日がんばって歯磨きしているおかげでwここ10年くらいは
歯のガリガリ治療はトンとご無沙汰なのですが、口の中にむにゅーっと
充填されるあのピンクの正体はコレだったんですねww
複製と造型を繰り返してつくる詰め物は、途中でサイズ変わるよなあー、と
思って読んでいたら、最後に収縮予め考えた複製をされていると書かれていて、
やっぱり!すげー!でも大変そう!と思ってしまいました。
ふと思い出すと、子供の頃、若干浮き気味の加工品をぐいぐい押し込んでは削り、
何度も赤い紙を噛まされて高さ調整をしていた先生は、そのへんの調整に
若干失敗して、最後に帳尻合わせをしていたのかなあ・・・
前回の質問の後、自分でも色々調べてみたのですが、レジンそのものでは
硬度を確保できないので、様々なフィラーでそのへんをカバーするようですね。
紹介していただいた歯科用製品の中では、2液混合光重合型が自分の用途に
合いそうです。
買ってみようかなあ・・・でも高いですねwww
叔父が歯科技工士をやっていまして、といってももう80近いのでほぼ引退状態ですが、つてで安く買えないか、ついでに要らなさそうな道具を強奪できないか、凸撃しにいってみます。
お早うございます。
最近100均のレジンを知って使い出したんですが、
6jiroさんの本職の講義を見てからやればよかったです。(タッチの差でした)
狭い所は注射器先端にアルミパイプでも取り付けて補充すればよかったんですね。
あ~大失敗しました。
でもこの講義は次回から生かせそうです。
ありがとうございました。
gyoさん こんばんは!
歯ブラシ頑張られているんですね^^とてもいい事ですね。
ただ、虫歯に強い人は歯周病に弱いとかもありますので、たまには検診に行ってみてくださいね。
さすがgyoさん!鋭いですね!おっしゃる通り途中でサイズが変わってしまうんですよ。
それを考慮してそれぞれの材質で膨張と収縮をコントロールしているんです。
ただ、使う材料が決まれば混水比とかは一定なのでそこまでばらつきは出ないんですけどね^^;
ここまでやっても実は患者さんの口に入れる時は様々な調整を行います。まず、歯って1週間も放置していたら結構動くことがあるんです。そのため型を取った時と入れる時では状態が変わっていることがあるんです。こうなると調整して入れないといけません。中には傾いて来た歯を元の位置に押し戻すためきつく感じることもあります。
それと噛み合わせは結構別物で、模型の歪みや噛み合わせを取る時の患者さんの噛む位置などによってほとんどの場合調整が必要です。
叔父さんが歯科技工士さんなのですか!素晴らしいお仕事をされておられたんですね。
技工士さんなら歯科用のレジンもっと沢山の種類使われていると思いますよ。
何か良さそうな物が入手できるといいですね^^
ottoさん こんばんは!
ブログ見させていただきました。
そうですね細いシリンジで少量づつ入れると気泡は最低限に抑えられると思いますが、
この手のレジンて硬化するときに気泡が出るとも聞いたことあります。
それでも、あの工作は雰囲気出ていていいですね〜!
素晴らしいと思いました!